こんにちは、始条 明(@AkiraShijo)です。
クリストファー・ノーラン監督作『TENET/テネット』公開初日の0時回、レーザーIMAX版で観てきました。都会最高!本記事では劇中で描かれる時間の逆行現象や、それに伴ったちょっとややこしいストーリーをわかりやす〜〜〜〜〜〜〜〜く(自称)整理/考察していきます。
~以下『TENET/テネット』のネタバレが含まれます~
まずはざっくり感想。
逆行アクションを駆使した映像の妙は楽しかったです。メイキング超見たい。ロバート・パティンソン演じるニールくんの渚カヲル的魅力もよかった。櫻井孝宏、吹替続投してくれ〜〜
(カッコつけた言い回しでわかりにくい点もありつつ)かなり丁寧な説明や「ここ伏線ですよォ~!!」的なカットもあり、ノーランお得意の「複雑だけど難解ではない」感じになっていたかなと思います。
マイケル・ケインが福田雄一作品の佐藤二朗みたいにひと笑い取ってたのはよかった。今後もああいう立ち位置でいくのか……?
ただエリザビス・デビッキ様演じるキャットの描き方は……自己破滅型メンヘラモラハラDVクソ野郎の被害者として(対抗する主人公の言動含め)ちょっとどうなの!?と思わなくもないかな。
それはそれとして とにかく本記事では時系列(と呼称できるのか?)を紐解いていこうと思います。一回観たばかりでガーッと書いてるので、後々より正確な考察が登場するかとは思いますが、ひとまずの研究発表として書き残しておきましょう。
大前提
- ざっくりタイムトラベルもの+αとして捉える。
- 普通の(?)タイムトラベルだと「行動」→「過去に戻って」→「また行動」。
- 『TENET』においては、この「過去に戻って」の部分が「逆行」。ビューンと一瞬で終わることなく、戻りたい時間ぶん逆行空間の中で過ごす必要がある。
- タイムトラベルものにつきものな「過去が変わったことで過去を変えようとする」みたいな、いわゆる「ニワトリが先かタマゴが先か」、あるいは「一周目」みたいなやつはざっくり無視できる。とにかく起こったものは起こったし、起こるものは起こる。映画で描かれたのは上書きされ終わった最終セーブデータ。
- イメージは『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』。あくまでイメージ。
- タイムトラベルものに同じくつきものな「観測者の存在による事象の確定」みたいなのも、同じくざっくり無視。撃とうとすることで弾が戻ってくる逆行銃とかはちょっとそれに近いけど、大枠の把握にはとりあえず不要。
- ある個人の視点で見ると「順行」→「逆行」→「順行」→「逆行」→……の繰り返しはあれど、これはあくまで一方通行。同じ人間が分裂したり、行動自体をやり直したりはできない。ので、本記事でもキャラクターごとの視点で紐解いていく。
- 未来からやってきたテクノロジー・回転扉。未来人の情報をもとに、世界に複数箇所建造されたっぽい。コレを通ると人でもモノでもなんでも逆行。イメージとしては「逆行属性付与」みたいな感じ。
- なので、逆行人間は順行酸素(普通の酸素)を吸えない。逆行酸素が必要なのでボンベを持って一緒に回転扉を通る。
- エントロピーがなんちゃらかんちゃら。ぶっちゃけコレもあくまで大枠の理解には不要だけど概説。
- エントロピーとは「乱雑さ」。コーヒーにミルクを入れると勝手に混ざる。コレは宇宙規模でも同じで、エントロピーは常に増加し続けるというのが熱力学第二法則。要はこの宇宙における大前提のルール。
- 水が凍る時とかはエントロピーが減少しているように見える(液体のときは暴れ回ってた水の粒が、規則正しく並んで固体になってる=乱雑じゃなくなってる)が、水を凍らせるためにエントロピーがより増大しているので全体で見るとエントロピーは増大している。
- エアコンの室外機がメッチャ熱いみたいな。
- で エントロピーを減少させられるようになったのが未来人の技術。それを応用したのが回転扉。
- なので逆行属性はややこしい。逆行ライターは物体を凍らせていくし逆行銃は弾丸を吸い込む。細かく分析するとキリがないけどとにかくそうなる。
- 逆行属性を付与された逆行銃で撃たれた順行キャットが死にかけ、治療のために逆行が必要だったのはこのためか(キャット自身にも逆行属性を付与すれば、普通に撃たれたのと同様に治療できる)?
- ホントにざっっっくり言うと、逆方向を進む電車から同じ方向に向かう電車に乗り換える、みたいなイメージ。
- もっと詳しく説明。原因→結果 が逆転すると 結果→原因 。さらに飛躍して「結果から原因を作る」と捉えられる。
- (こういう表現はまたややこしくなるけど、便宜上こう表現すると)過去に干渉して「原因があったことにしてしまえる」のが逆行能力。
- ひっくり返った銀の車のシーンでは「車は凍っていた」が その"原因"。「凍っていた車が→炎に温められた」という「原因→結果」が「あった」ということにしてしまえる、と書くとわかりやすい。わかりやすいか?
- なので 逆行主人公の視点から見るとその逆、すなわち炎上→凍結を食らうハメになった。
-
逆行主人公視点から見ると……
逆行セイターの攻撃!
逆行ライターを使用!
逆行炎が順行車を包む!
逆行主人公 逆行炎は普通にクソ熱い!
順行車 逆行炎に冷やされる!
順行車 メッチャ凍る!
逆行主人公 順行車がクソ冷たい!……的な。
- 割れてたドアミラーについては、上の方に書いた「とにかく起こったものは起こったし、起こるものは起こる」の大前提から。
- 荒木飛呂彦先生ふうに言うと「スデに"攻撃"は完了していたんだッ!」
- 言う必要あった?
タイムラインの整理
……と いった前提のもと、キャラクターごとの視点の時系列(一方通行のタイムライン)を、劇中で起こった大きな出来事ごとに切り分けつつ整理していきましょう。
メインとなるキャラクターは4人。
名無しの"主人公"
(ジョン・デヴィッド・ワシントン)、
ナゾ多き美青年ニール
(ロバート・パティンソン)、
クソカス野郎のセイター
(ケネス・ブラナー)、
脚が10メートルあるキャット
(エリザベス・デビッキ)。
このうち、上3人をメインに分析。キャットについては逆行状態でほぼ動いていなかったので、随時補足します。
劇中で起こった大きな出来事は4つ。
①冒頭のオペラハウスの戦い、
②夫婦のフェリーとスタルスク12での同時作戦、
③飛行機が突っ込んだロータス社の金庫、
④大迫力の時間挟撃カーチェイス。
※①と②はほぼ同時。便宜上分けて考えます。
ここでちょっと閑話休題。これら4事件の"前"と"後"、すなわち過去にスタルスク12で起こった事故と、未来でのTENET結成には、それぞれセイターとニールが関わっています。ので、まずはこの二人についてざっくり考察。
セイターは、核実験場として見捨てられた秘密都市スタルスク12の出身者。そこでアルゴリズムと呼ばれるパーツを見つけてしまい、武器商人に成り上がったけど死期を悟って世界的ダイナミック自殺を図る。最悪のサイアム・ビスト(ガンダムUC)。
アルゴリズムは世界中に隠された9つのパーツを組み立てて起動させることでなんかヤベー逆行現象が起こる。実際は起こらなかったので詳細不明(仮面ライダーオーディンのファイナルベント、あるいはダークキバのキングスワールドエンド)。
回転扉を作らせたのも、アルゴリズムを発見したのも、悪人の手に渡らないよう過去に隠したあと自殺したのも未来のとある天才博士。そんな物騒なモン過去に送らず勝手に死ね!!!と言いたいところだけど、まあ見つけちゃったら作らずにはいられなかったのかな。とにかくできちゃったモンはできちゃったんだからしょうがない。
ちなみにこないだ、自宅の裏(徒歩2分)にチェーンのピザ屋ができました。誘惑に負け続けています。できちゃったんだからしょうがない。
オペラハウスでの戦いの後「違う男だ!」……で拉致された主人公について。あの作戦ちょっとややこしくて、プルトニウム(実際はアルゴリズムのパーツ)入手のためにCIAが潜入させていたのが2階席の金髪スーツの男、彼を観客ごと消すために爆破テロが偽装され、金髪スーツを救うために現地警察に紛れ込んで来たのがCIA部隊、で 金髪スーツはCIA服を着て救出され、黒髪CIA隊員(ジョセフ=ゴードン・レヴィットに似てる)の方がスーツを着て別ルートで(入れ替わりカモフラージュとして)逃げる……はずが、主人公が「観客を救うぜ!」とか言い出したモンだからそれを手伝わされ、で結局逃げるのが遅れてバンに拉致され、るんだけど金髪スーツはとっくに逃げてたので「違う男だ!」というワケですね。
セイターがアルゴリズムを見つけたのは偶然だったのか、ホントに別の未来人(地球が破滅する前に時間を逆行させたい)の意思が介在したのかは不明……かなあ。したとしたら、自己破滅的な性格も見込まれてトリガーとして使われちゃったのはちょっと可哀想かも。でもまあ奥さん殴ってたし同情の余地ゼロ。
セイター(とTENET部隊も)はかなり逆行技術に慣れているようで、特にカーチェイスシーンでは主人公サイドを手玉に取って完全勝利。逆行銃で言うところの「実際には弾が戻ってくるけど、意識としては撃とうとする意志を持つ」みたいな意識コントロールがメチャメチャ上手いのかも。『のび太の大魔境』の先取り約束機、みたいな。
そのコントロール、すなわちセーブデータの上書き的なこと、に必要なものこそがTENET(信条)の強さなのかも……つってね。オタクはタイトル回収が好き。
(この後の整理では、とりあえずあのカーチェイスのシーンにおけるアルゴリズムのパーツのやりとりについては省略。とにかくキャットを利用されて・情報を聞き出されて・パーツを奪われた。)
ニールは、いつかどこかの未来(自称だと数年後)で"主人公"にスカウトされて逆行してきたエージェント。『ターミネーター』のカイル・リース的な。
キャットの息子説もある(フルネームがMAXIMILIENなんじゃないか、とか SATORは「我が子を食らうサトゥルヌス」なんじゃないか、とか)みたいだけど「その可能性もあるし・そうだったら面白いけど・そうとは言い切れない」妄想というかファンフィクションの域に留まるかなと。まあでも面白いよね。『アイアンマン2』の少年=ピーター・パーカー説みたいな。アレ公式になっちゃったんだっけ?
長い閑話休題終わり。
いきなりですが、3人の動きをざっくりまとめた図がこちら。後でより詳しく書いてるので、この図はとりあえずザッと見てください。
以下、まずはまたまたとりあえず事件の時間ごとに起こったことを列挙。その後、各キャラごとの視点でまとめ直します。
①オペラハウス
主人公:逆行ニールに助けられる。この時、弾丸の逆行現象を目撃。
ニール:逆行し続けて過去に到着。主人公を救う。どこかの回転扉に入り、順行開始。
②フェリー/スタルスク12
主人公:TENETに勧誘される。ニールと合流。逆バンジー。
ニール:主人公と合流。逆バンジー。
(ラストバトル時)
主人公:逆行しながら作戦準備。
赤グループとして参戦。逆行ニールが扉を開く。順行ニールにロープで救出され勝利。
ニール:青グループとして参戦。地下への入口が爆破されるのを目撃。回転扉に入り、順行へ。主人公をロープで救出して勝利。もう一度回転扉に入り、逆行へ。地下の扉を閉じ、撃たれて死亡。
※順行側(主人公)から見ると、死体が蘇り扉を開けて……となる。
セイター:順行に戻り自殺を図る。キャットに射殺され死亡。
キャット:順行に戻り作戦開始。セイターを射殺。
③ロータス倉庫
主人公:メットを被った逆行主人公と戦う。
ニール:メットを被った順行主人公を目撃。
(カーチェイス後)
主人公:エンジンの爆発に巻き込まれて戦闘にもつれ込む。回転扉に入って順行へ。順行ニールに目撃され逃走。TENET部隊と合流しどこかの回転扉に入って逆行。
ニール:回転扉に入って順行へ。逃走。TENET部隊と合流しどこかの回転扉に入って逆行。
④カーチェイス
主人公:カーチェイスに負ける。キャットを助ける。が、セイター部隊に連れ去られる。順行セイターに尋問される。撃たれたキャットを助けるため逆行。また負けて逆行ライターで凍らせられる。ニールに救助される。
ニール:カーチェイスに負ける。主人公と逆行。主人公を救助する。
セイター:回転扉前でキャットにツバを吐く。回転扉前で待機。部隊が主人公とキャットを連れてくる。主人公を尋問する。回転扉に入りキャットを撃つ。主人公を逆行ライターで凍らせる。道路でキャットを回収。逆行カーチェイス。キャットを車から降ろす。
キャット:回転扉前で順行セイターにツバを吐かれる。逆行セイターに車に乗せられる。主人公に助けられる。が、セイター部隊に連れ去られ逆行セイターに撃たれる。治療のため回転扉を通され逆行へ。
ここは特にややこしいのでざっくり図に描いて整理。
キャットは基本的に順行のまま、逆行→順行セイター間でキャッチボールされてるようなイメージ。
キャットが車から解放された時、逆行セイター視点では扉を開けるとキャットが飛び込んでくる。怖っ。というか、セイターがいかに逆行技術の扱いに長けているかがわかりますね。
と いうワケで キャラごとにまとめ直すとこんな感じ。
主人公
逆行ニールに助けられる。この時、弾丸の逆行現象を目撃。
TENETに勧誘される。ニールと合流。逆バンジー。
メットを被った逆行主人公と戦う。
カーチェイスに負ける。キャットを助ける。が、セイター部隊に連れ去られる。順行セイターに尋問される。撃たれたキャットを助けるため逆行。また負けて逆行ライターで凍らせられる。ニールに救助される。
エンジンの爆発に巻き込まれて戦闘にもつれ込む。回転扉に入って順行へ。順行ニールに目撃され逃走。TENET部隊と合流しどこかの回転扉に入って逆行。逆行しながら作戦準備。
赤グループとして参戦。逆行ニールが扉を開く。順行ニールにロープで救出され勝利。
ニール
逆行し続けて過去に到着。主人公を救う。どこかの回転扉に入り、順行開始。
主人公と合流。逆バンジー。
メットを被った順行主人公を目撃。
カーチェイスに負ける。主人公と逆行。主人公を救助する。
回転扉に入って順行へ。逃走。TENET部隊と合流しどこかの回転扉に入って逆行。
青グループとして参戦。地下への入口が爆破されるのを目撃。回転扉に入り、順行へ。主人公をロープで救出して勝利。もう一度回転扉に入り、逆行へ。地下の扉を閉じ、撃たれて死亡。
※順行側(主人公)から見ると、死体が蘇り扉を開けて……となる。
セイター
回転扉前でキャットにツバを吐く。回転扉前で待機。部隊が主人公とキャットを連れてくる。主人公を尋問する。回転扉に入りキャットを撃つ。主人公を逆行ライターで凍らせる。道路でキャットを回収。逆行カーチェイス。キャットを車から降ろす。
順行に戻り自殺を図る。キャットに射殺され死亡。
キャット
回転扉前で順行セイターにツバを吐かれる。逆行セイターに車に乗せられる。主人公に助けられる。が、セイター部隊に連れ去られ逆行セイターに撃たれる。治療のため回転扉を通され逆行へ。
順行に戻り作戦開始。セイターを射殺。
こんな感じでどうでしょう。鑑賞の一助となれば幸いですが、間違ってたらゴメンね。そのうちまた観たら追記・更新するかもしれません。たぶん……
わかんないトコとかあったらTwitter@AkiraShijoにDMとかでご連絡ください。できる限り一緒に考えます。記事のアップデートにもなるので……よろしくお願いします。
※20.09.21追記
パンフレットが良い!みたいな話は聞いてたけど、なんか解説とかも載ってるぽいスね!!!矛盾してたらどーしよ。また買って読んでみます。
※20.10.02追記
ラストの逆行ニールくんはどこから入ってきたの?(順行から見たら どこに出ていったの?)って疑問を友人から聞いたので考えてみました。通路が土砂で塞がってるから入れないのでは?って話ですね。
たぶん……あの後、土砂も通路も爆破で丸ごと吹っ飛んだと思うんですよ。なので、ニールくんは通路のあった場所だけを覚えておいて形成されていく通路を辿りながら走って行ったんじゃあないかなと思います。
テネット、今後数ヶ月はパティンソンくんのファンアートがネットに溢れます これは予言です
— 始条 明 (@AkiraShijo) 2020年9月18日
オレの占いは当たる。
ところで!!!こういう理屈っぽいオタクがダベってるだけのネットラジオを始めたので、ぜひお聴きください。こんな記事をここまで読むような人なら絶対楽しんでもらえると思います。これはマジ。
チャンネル登録だけでもしてってね。ポッドキャストとかSpotifyでも聴けます。
ノーラン監督全映画分析回。
こっちはTENET感想回。
~本考察は、ツイキャス配信に参加してくださったホワイトさん、フジモトさん、りうさん、さまさん、あかぎんさん、yoshiさん、カンミさんほか 複数の方々のご助力あって書き上がりました。ありがとうございました!~