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【超雑感】映画『ザ・フラッシュ』

監督:アンディ・ムスキエティ

脚本:クリスティーナ・ホドソン

2023年6月16日公開 144分

2023年6月1日 試写にて鑑賞〜

6月16日 シアタス調布にて鑑賞


※感想後半のネタバレ部分には注釈があります


あんまホメてません。

 

 

 

超高速ヒーロー・フラッシュとして活動するバリー・アレン(エズラ・ミラー)。幼い頃、何者かに母を殺された彼は、投獄された父の無実を晴らそうと奔走していた。そんなある日、能力を全開にすることで過去に戻れることに気付いてしまう……


・2013年『マン・オブ・スティール』から続くユニバースもの、DCEUシリーズの最新作。


・原作というか原案になったのは、コミックシリーズ『フラッシュポイント』。バリーが過去に戻っちゃって、その影響でえらいことになり、バットマンに助けを求めるんだけど、そのバットマンは彼が知るブルースとは別人で……という、ざっくりしたプロットは同じ。


・DCコミックスの世界では、"世界を揺るがすほどの超超大事件が起きることで、世界そのものがリセット・再構成される"ということが何度か起きている。この"フラッシュポイント"事件もその一つ。


・で 今回、過去を変えてしまったことによって現れる別世界のブルース・ウェイン役を『バットマン』『バットマン リターンズ』のマイケル・キートンが続投。


・ほか 『マン・オブ・スティール』で登場したスーパーマンの宿敵ゾッド将軍をマイケル・シャノンが再演、スーパーマンならぬ黒髪のスーパーガール役を新鋭サッシャ・カジェが演じる。


・フワッとしてるようで意外としっかり繋がってたDCEUシリーズ、会社の都合で二転三転するも……ここでとりあえず一区切り、らしい。まあ ちょいリブート くらいの感覚で捉えるのがいいのかも。


・に 加えて、主演エズラ・ミラーの度重なる奇行や暴行、逮捕逮捕また逮捕が悪い意味で話題に。


・ただでさえ『バットガール』がお蔵入りになったり、会社のトップが入れ替わったり、キャラクターの人気を支え続けたドラマシリーズ(アローバース)を急速に畳んだりと、とにかく何もかもゴタゴタしてる中で公開されたのが……この『ザ・フラッシュ』。


・そもそも「変わってしまった世界!」とか「マルチバース!」とかの面白みを描くなら、まず元の世界をしっかり描いた上で「か 変わっている!!!」をやってほしいところ。


・で じゃあDCEU……特にフラッシュなんて、初の単独主演なのにいきなり『フラッシュポイント』かよ!?という不安は大いにあった。


・実際観てみると、そのへんはなんとかクリアできていたように思う……というより「世界が変わってしまった!」よりも「変えてしまったせいで新しい問題が!どうする!?」がドラマのメインになっていたので、いい意味でケムに巻けていたように感じた。


・なにを書いてもネタバレになるので、詳しい感想は以下に。

 

 

 

 

 

 

 


〜以下、ネタバレを含みます〜

 

 

 

 

 

 

 

 

・ちょっとまず言わせてほしいんですけど。

 


ニコラス・ケイジの話ね。

 


あのさあ〜〜〜〜。


・最近の映画、多いですよね。サプライズ。特にアメコミ系のやつで。


・別に……それはいいのよ。面白ければ全然。


・「サプライズを重視しすぎている!」みたいな批判もあるっちゃあるけど。別に上手いこと見せてくれてりゃ文句ないんです。


・たださあ〜〜〜〜。やりようってモンがあるじゃない。


・たとえばさ。同じようなマルチバースもので『ノー・ウェイ・ホーム』とかはさ。「アンドリューだ!」「トビーだ!」って なるけど。なるけど……でもさ、最終、ドラマ的にちゃんと「スパイダーマンだ!!」って思えるワケじゃない?


・この作品でもさ。「マイケル・キートンだ!」とはなるよ。なるけど……「バットマンだ!!」って思えるようにはなってると思うの。


・でもさあ〜〜〜〜。アレは違うじゃ〜〜ん。


・アレ見てさあ。「大変だ!すべての世界が崩壊の危機に……!」つってさ。思えるか?

 


・なんつーかなー。ドラマを盛り上げるためのパーツとしてサプライズがあるのは全然いいんだけど。サプライズのためのサプライズ?みたいになっちゃってない?っていう。


・単純に、テンポが削がれない?と思うんだけど。あそこでフラッシュvsフラッシュの会話とかなんも頭に入らなくなったし。


・クリストファー・リーヴのスーパーマンとヘレン・スレイターのスーパーガール、夢の共演シーン!とかだって、いや、今やらんでも……って感情しか浮かばなかった。


・若返りCG生き返りCGとかの是非をとりあえず置いといたとしても、なんかヤだったな〜。


・仮面ライダーのさ、『平成ジェネレーションズFOREVER』とかもさ。佐藤健がサプライズで登場したんだけど。アレもさ〜〜〜〜〜〜。こっちは野上良太郎(仮面ライダー電王)が見たかったのに、出てきたのコレただの佐藤健やんけ!!!みたいな。


・戦いが終わって戻っていく世界……のひとつとしてチラッと映す、とかでよかったんじゃないかなあ。「ニコラス・ケイジじゃん!!!」でしかないもん、アレじゃあ。

 


・コミックでもさあ。確かにあるよ?こういうの。いろんなマルチバースが大変だ!みたいなシーンで、えっ あそこも描くの!?っていうのとか。


・でもさあ〜〜〜〜。ちょっと違うけど『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でも思ったんだけど。「ショック!別世界のヒーロー皆殺し!」みたいなシーン、コミックでもあるんだけどさ。

 

・なんか……実写でやられちゃうと……違うんだよ!!!


・変に重みが出ちゃうというか、このリソースの使いどころがココかよ!?って思っちゃうというか。

 

・補足しておくと、ニコラス・ケイジはティム・バートン版『バットマン』の成功を受けて制作されるはずだった新作『スーパーマン』映画……の主役を務めるハズが頓挫しちゃった、という過去あり。赤パンツを履かない・飛行しない・巨大なクモと戦う……という条件で脚本が製作された、という逸話も(一部で)有名。

 


・本編の話に戻りまーす。


・フラッシュの能力描写は悪くなかったけど、なんであんな真っ黄っ黄のビジュアルになっちゃうんだろう。もったいないな〜と思いながら見てた。


・街を突っ走ってゴッサムに急行するシーンとかは超カッコ良かった!


・というか 冒頭のシーンはかなり良かった。ああいう「今日もヒーローは大忙し!」みたいなシークエンス、大好き。


・ベンアフ版バットマンの、あくまで人間レベルの身体能力だからこその引きずり回されながら食らいつくカーチェイスシーン、良かったなあ。これぞバットマン!ってカンジ。


・キートン版バットマンの戦いもよかった。あんま可動しないスーツならではのもっさりした体術に"重み"を持たせるような格闘アクションの見せ方、デジタルなんだかアナログなんだかようわからんガジェットに、往年のシリーズを思い起こさせるような演出も光ってた。


・キッチンでの生身のアクションもタダモノじゃない感出ててよかったけど、別にスローじゃなくてもよかったような。


・ゆでる前のパスタを使ったマルチバースの説明シーンも好き。


・お母さんとの思い出の一品もトマトパスタだったけど、そこは別に関係なかったネ。


・久しぶりに戦ったあと ニヤリ……と笑う鏡の中の自分を見ながら傷を縫うシーンも好き好き。もう一人の自分"バットマン"として生きることこそを本懐とするブルース・ウェイン……というキャラクターをよく表したカットだと思う。


・過去を変えちゃったり、メンターっぽい老人を鼓舞して引っ張り出したり、雷を呼び寄せてパワーを取り戻したり……という構図を『バック・トゥ・ザ・フューチャー』になぞらえたのも面白い。ファンにはおなじみのエリック・ストルツ主演交代騒動のネタも(ちょっとしつこかったけど)楽しかった。


・もうちょっと老ブルースをバリーのメンターな立ち位置で描いてくれてもよかったかもな、とは思う。これは完全に好みの問題だけど。


・ベンアフブルースとの夜の会話シーンが良き師弟っぽくて好きだったのもあるし、あとやっぱりジャスティス・リーグ内では若手ヒーローであるフラッシュ……が、過去のバリーの前だと急にベテランになっちゃって面食らうので。

 

・そういやあの会話シーン、過去に戻った経験についてサラッと話してたけど、(『ジャスティス・リーグ』の)スナイダーカット版から繋がってることになってる?


・今回初登場、黒髪のスーパーガール。ビジュアルは超カッコ良かったんだけど……

 


・なんか……10年前の『マン・オブ・スティール』より……ショボくないか?アクション…

 


・これはたぶん 俳優が悪いワケじゃなくて。見せ方なのかVFXのクオリティなのか、なんか軽〜く見えちゃう感じ。緩急のつけ方がユルいのかなあ。


・シリーズ的には新キャラとはいえレジェンドとしての重みがあるキートン、と肩を並べる上で、描かれるバックグラウンドの薄さも気になっちゃった。


・オリジンとしては、ドラマ版のスーパーガールと似たような話(コミックだとポスト・クライシス期、フラッシュポイント事件が起こる前のバージョン)をベースにしつつ、『フラッシュポイント』におけるスーパーマン/カル=エルの境遇を重ねてるような感じ。

 

・あと『フラッシュポイント』だと、カル=エルが監禁されてたのはアメリカの秘密施設だったと思うんだけど、今回はロシア(シベリア)に変更……また赤い星が悪の象徴にされている。『スーパーマン:レッド・サン』のイメージも入ってんのかな。


・せめてクリプトン星を離れる前、赤子のカル=エルを守り抜くと誓う回想シーン、とかを挟んでほしかったところ。全部セリフで説明されても……


・あとゴメン、ガンくんにサフランくんよ、まさかこれでスーパーガールの出番終わり!じゃあないよな……?


頼むよマジで。もったいなさすぎる。


・レジェンド・キートンはともかく、バチバチにイケてるニューヒーローがあんなサクッと刺されて終わりはないぜ。さすがに。


・ちゅーかさー。この映画、全体的に女性キャラクターの扱い、ヒドくね?


・バリーのお母さんがドドドドド直球の"冷蔵庫の女"なのはさあ。まあ……もう、とりあえず置いとくとしてもさ。


・記者のアイリス・ウェストとかさ。まあ、『フラッシュ』のヒロインだからってことで、恋愛関係に発展していくのはわかる。わかるけど、接近すんの早すぎじゃない!?


・例えばこう、父の無実を信じて真実を追い求める姿に自分を重ねて……とかさ。そういうのがチョッとでもあればわかる。わかるんだけど……「はい、ヒロイン出しときます!昔馴染みだからすぐ惚れます!」って感じにしか見えなかったなー。ペラすぎないか?


・あと ゾッド将軍の副官で……なんならゾッドより人気かもしれんファオラ=ウル様。アンチュ・トラウェ、よく出てくれたなオイ!


・こっちも『マン・オブ・スティール』より目立たず……


・『ジャスティス・リーグ』でバリーのお父さん役だったビリー・クラダップ(『ウォッチメン』のマンハッタン)はリキャスト。


・「過去を変えてしまったせいでその人の顔まで変わっちゃう!」みたいな話なのに、なぜこんな中心人物が…………?


・それはそれとして主役のバリー・アレンことエズラ・ミラー。この人の演技力で保ってた……くらい良かった。


・フラッシュの能力の視覚化、という面でも面白かったし、もろもろのギャグシーンを含めてコメディタッチな演技から、ヒーローとして……息子として……なシリアスなパートまで、感情がビンビン伝わってくる素晴らしいパフォーマンス


・最終的に"諦める"ことで事件を収束させるワケだけど、そこはもうちょっと上手く演出してほしかったな〜と思った。諦めるっていうか"受け入れる"という強さ、を強調してほしかったんだけど。


・「何回やっても上手くいかない!」みたいな場面の絶望感をもっと見せてほしかったな〜。3回くらいしかやってなくない?と思っちゃった。

 

 

・あとラストは……ごめん、マジメにやってる?

 

 

・本気でこの後、クルーニー登場させる気ある?

 

 

・なんかなあ〜。『フラッシュポイント』を利用してシリーズ全体を立て直します!は 別にいいんだけど、ちょっとメタ的な面白さに寄りすぎちゃってないか?現実世界の都合とか、忘れさせてほしいんですけど。

 

・その割に シリーズの屋台骨を支えてきたドラマ版とかは見るからにないがしろにするし……

(グラント・ガスティン、出〜へんのかい!!!!!!)

 

・メッチャ文句言っちゃったけど、吹き替えでもっかい観ます。ハイ。